身勝手(じゃない)な男
歌舞伎座 夜の部 1月12日
テンション低くてすんません。でも、覚悟してたよりはひどくなかったので、安心しま した。ただ、“覚悟してたよりは”ってだけで長兵衛さんを愛せるかっちゅーと、それと これとは違います。あ、でも、いい人でいい人でいい人で。愛すべき人物ではありますけど。
まず、前半がつまんない。よく、テンポとか間って一口にいいますが、あのね、角海老 座敷までがつまんないのは・・・なんでかな〜?って考えてみましたら・・・ ちょーべーさんが最初からいい人、最初から反省してる人、に見えちゃうせいだと思うん ですよ。はい。 世話物に欠かせないテンポやら、間、雰囲気、小気味よさ、その他諸々ね、技術的なことは、 あの吉さまなら、研究もし、お稽古もし、自分なりの自分の中での世話物の人物像やら演じ 方ってのはご自身の中に確かなものを持ってるだろうと思うのよ。それが、観客の目や心に どう映るか、どう感じるかは別として。 だから、世話物のテンポや間は置いといて、やっぱ、ぶっちゃけていえば「酒と博打に目の ない後先考えず」の男に見えないってことかなあ。酒と博打に目はないけど、善良な人間で はあるんだけど。元来。善良で小心で、気短で頑固。 単純でなんかに夢中になったらかーっとなって仕事も家のことも忘れてしまう江戸っ子。
善良、小心、気短、頑固。までは説得力あるんだけど、なんといっても酒と博打をやって るときは全てを忘れてのめりこんじゃってるだろうって感じが無い。元来いい人で、女房 や娘のことも想ってはいるのだけど、酒を飲んではおだをあげ、博打をやっちゃあ、負け がこんでも手をひけない。ような瞬間湯沸かし器のとこがうかがえない。だから、もー、 自宅に帰ったときから反省しちゃってみえるし、ま、もちろん、敷居が高いなあと思いつ つ帰ってきているんだろうけどね。女房にぎゃんぎゃん言われて、自分が悪いってことは 重々承知してながらも、ぎゃんぎゃん言われてるうちに激昂しちゃうお単純さに欠ける。 角海老座敷では、娘の真意を知らずに叱る前から、娘の真意に気づいてて、反省100% に見えちゃう。 やっぱ、しょーもないとーちゃんが娘の気持ちにほだされて、江戸っ子の良い意味での単 純さと善良さでがらっと反省改心しちゃうのが面白いんであって、最初から真面目でいい 人の色が濃厚なちょーべーさんでは、そりゃ、めりはりがありませんわ。特に角海老さん ちでのお久ぼうとの絡みを楽しみにしてましたが、意外とここが良くないのも、めりはり がないからなんだろうなあ。娘を愛しててかわいくて仕方がないって気持ちは、嫌だっ! ってほど伝わるんだけどね。なんか、序幕から角海老さんちまでは気が乗らない。
と、大川端からあとはねぇ、もー、いい人でいい人でいい人で改心して改心して改心しま くってる長兵衛さんだから、後半はぐー。文七に説教する姿なんざ、ああた、辻説法師? いや、宣教師?いや、あなたは神を信じますか〜?だもの(なんのこっちゃ) 人の命ゃあ、金じゃ買えねぇ・・・なんて言われた日にゃー。もう死にたくなっちゃうね(笑) そして、金持ったまま、死んじゃいけねーよ!って2、3度言いつつ去っていくんだけど。 金あったら死なないっしょ?どーいう意図のあるセリフなのかなあ。 割長屋へ戻ってからは、ハッピーエンドがすぐそこまで来てるし、長兵衛夫婦も楽しそ う(?)に喧嘩して、出演者全員がいい感じに走っている。観てる私もようやく「ほっ」 と。安堵の嘆息を・・・なんとか、幕切れには自分の口元もにんまりほころびて、あく までも、予想と覚悟してたよりは満足できました。なんていうのかしらねぇ。でも、消 化不良だわねぇ。あのね、吉さま独自の世話物の世界って言うなら、それはそれでいい のね。私としては。
時代物の吉さまが無敵のきんぐおぶ苦悩であってくだされば、世話物は、世話物巧者の役 者さんと違った吉さまテイストでもいいのよ。納得さえできれば。悲嘆からハッピーエン ドって、図式は、吃又と同じようだけど、吃又は前半は大悲劇だもんね。(吉さまがや ると)だから、後半のハッピーエンドに救済されたようにホッとして安堵して感動もでき る。 でもねぇ、文七元結だと、そこまで重くやっては芝居が違ったものになっちゃうだろうし なあ。 前半をこれでもか苦悩にできないだけに、めりはりが違う意味でつかないよねぇ。 やっぱり、苦悩の人だからさ、博打して、帰ってきたときも、他人に騙されて、商売失敗 しちゃったとーたんみたいだし、自分の身勝手さで堕ちていく人には見えないのよねぇ。 だから、というか、だからこそというか、後半の改心長兵衛さんは良いんだけどもねぇ。 と、ポンポンとテンポのいい、リズミカル江戸っ子とは違う、朴訥頑固シャイ善良江戸っ子もね。 悪くない。こういう長兵衛さんもアリかな?と思いました。でも、そんなには愛せないなあ。 やっぱり。後半の「実におめぇはえれぇえれぇ。それでこそ江戸っ子気性。できました。播磨屋〜〜〜!」 が、一番よかった気がします。はい。 ・・・いや、そんなには愛せないけど、なんか、かーいらしいとは思ふ。。 2002年 1月16日 夜
寝ても醒めても表紙へ