4 Q 吉右衛門さんの絵を見て、白鸚さんは何とおっしゃってました? 吉さま:あのぉ、よくモデルになってくれましたね。時間がかかるから、普通は嫌がるんですけども、自分 も好きだったせいか、良くモデルになってくれました。僕が絵が好きなことは、嬉しかったんではないですかね。 若い頃、文人画をやろうと、鎌倉の岩波さんに教わったんですね。教えてくださいと頼んだらokが出て。 面白いおじいちゃまで、酒を水がわりにして絵の具を溶いたりして、お酒のみだったんですね、こうお酒のつい た筆をなめちゃうんですね。そのうち、良いご機嫌だったのか、「そんな若ぇ役者が今から絵なんか描いて どうすんだよ?んなことやってるより女と遊んだ方がいいんだよっ!」って。(笑)そんなこと言っても、教え てくれるって言うからやってたのにねぇ。で、言われてやめました。単純なんですよ。(笑)ええ、十代の 頃です。 Q 絵の話、芝居の話と交錯しますが、白鸚さんの教え方というのはどういうものだったんですか? 吉さま:ええ、いろんな方がいらっしゃいまして。弟の松緑さんは、カキヌキあり、きっちり教える音羽屋系 の教え方で、初代からの流れは、性根だけつかめという、九代目團十郎の教え方ですね、松王の初役のときに 聞きにいったら、「おまえ、見てただろ?」それで、「はい。」「そうか、それならいいじゃないか。」で終り。 でも、聞くと見るでは大きな違いで、見えないとこでいろんな動きがある、そういうのは教えてくれないんですね。 捨て台詞なんかでも、観てても聞こえないときがあるのに、言えないと、「覚えてない、知らないな。」で終る。 それと、僕も実父も次男坊で、共感があって、「こいつは大丈夫」と思ってたらしいんですね。それは嬉しい んですけど、信頼されると反抗したくなると。(笑) Q また、絵に戻りますけど、「半ズボンをはいた播磨屋」の絵は、闇がよく描けていますねぇ。何かで読んだ んですが、カラヴァッジョに影響されたとか?(銀座百点とおもわれる) あの、力道山や、ハムレットの絵なんか、闇の中に光が浮き出ているというか。あれが、カラヴァッジョでしょうか? 吉さま:…画伯のつもりではレンブラント・ライトだったんですが。(笑)ああ、あれは、 カラヴァッジョ展を見たすぐ後だったので、そう言ってしまったんですね。レンブラントのつもりでした。(笑) 闇、舞台も表は華やかで明るいですけど、裏にまわると奈落なんて真っ暗ですからね、そういう印象があって、 絵は暗くなるのかなあ。黒という色は一番難しい色で、使いこなせたらいいなあと思いますね。。レンブラント のように描きたいなあと。……………(思考と言葉がぶちぎれてしまったらしい。(^_^;)) ……助けてくださいよ〜〜〜! Q (^_^;)吉右衛門さんはそんなに絵がお好きで、お嬢さまの中には、絵がお好きな方は? 吉さま:ええ、はい、います。一番上と三番目が美術学校に行きまして、いえ、いっこうに目が出ないんですけど、 女房は反対してたんですね、普通に就職して普通に結婚してほしいと。僕も半分はそう思いますけど、好きな こと、やりたいことをやって欲しいなあと。 Q どんな絵ですか? 吉さま:………不思議な絵ですよ〜!2人とも不思議な絵です。僕なんて、絵のモチーフにするものがわからない。 具象とも抽象ともつかない……どちらかといえば気持ち悪い。。 Q 画家でいえば、どんな? 吉さま:ああ、そういうのを嫌いますね。既存の画家と比較されたりするのを凄く嫌う。僕なんか、これを真似 できたら(とチラシのルノアールの絵を見る)いいなあと。本当にこの色が出ないですよね。こう見ると大した ことないと思いません?(楽に描いてるように見えるという意味か?)でも、描けといったら描けない。 ちゃんと、子供の肌を描いたら子供の肌になってるし、中年の女性を描けばその肌になってるしね。 モネの「カササギのある風景」ですか?あれなんかでも、見た瞬間を描いてますね、寒いというか、その場 の寒さ、雪の溶けるにおいや、わらぶきの匂いを感じる。こら、すげーなと。空気を描くってのは難しいです よね、絵の前で自分を見つめさせる、感じて考えさせる、そして、いろんな絵を見て、いろんなことを考える 僕は絵が好きでよかったと思いますねぇ。印象も抽象もすばらしい。考えついたときの喜びというか。 Q それほど、絵がお好きだと、美術館などでも一枚の絵の前にずっといたいでしょうね? 吉さま:いたいんです。一時間なり、二時間なりいたい。でも、次の観光地に行かなくちゃ…… でも、だから、自分のモノにしたいと思いますね。コレクターの方も目的はそれなんでしょうね。 いつも、旅行に行くたびに、フィレンツェならウフィッツィー、パリ、ロンドンにも、たくさんあります。 僕は、そう買い物したいということはないんですね。でも、しがらみという…(笑)
2002年 11月 4日 夜 記 も少しよ〜。 其の五 寝ても醒めても 表紙へ