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Q 吉右衛門さんの絵を見て、白鸚さんは何とおっしゃってました?

吉さま:あのぉ、よくモデルになってくれましたね。時間がかかるから、普通は嫌がるんですけども、自分
も好きだったせいか、良くモデルになってくれました。僕が絵が好きなことは、嬉しかったんではないですかね。

 若い頃、文人画をやろうと、鎌倉の岩波さんに教わったんですね。教えてくださいと頼んだらokが出て。
面白いおじいちゃまで、酒を水がわりにして絵の具を溶いたりして、お酒のみだったんですね、こうお酒のつい
た筆をなめちゃうんですね。そのうち、良いご機嫌だったのか、「そんな若ぇ役者が今から絵なんか描いて
どうすんだよ?んなことやってるより女と遊んだ方がいいんだよっ!」って。(笑)そんなこと言っても、教え
てくれるって言うからやってたのにねぇ。で、言われてやめました。単純なんですよ。(笑)ええ、十代の
頃です。

Q 絵の話、芝居の話と交錯しますが、白鸚さんの教え方というのはどういうものだったんですか?

吉さま:ええ、いろんな方がいらっしゃいまして。弟の松緑さんは、カキヌキあり、きっちり教える音羽屋系
の教え方で、初代からの流れは、性根だけつかめという、九代目團十郎の教え方ですね、松王の初役のときに
聞きにいったら、「おまえ、見てただろ?」それで、「はい。」「そうか、それならいいじゃないか。」で終り。
でも、聞くと見るでは大きな違いで、見えないとこでいろんな動きがある、そういうのは教えてくれないんですね。
捨て台詞なんかでも、観てても聞こえないときがあるのに、言えないと、「覚えてない、知らないな。」で終る。
それと、僕も実父も次男坊で、共感があって、「こいつは大丈夫」と思ってたらしいんですね。それは嬉しい
んですけど、信頼されると反抗したくなると。(笑)

Q また、絵に戻りますけど、「半ズボンをはいた播磨屋」の絵は、闇がよく描けていますねぇ。何かで読んだ
んですが、カラヴァッジョに影響されたとか?(銀座百点とおもわれる)
あの、力道山や、ハムレットの絵なんか、闇の中に光が浮き出ているというか。あれが、カラヴァッジョでしょうか?

吉さま:…画伯のつもりではレンブラント・ライトだったんですが。(笑)ああ、あれは、
カラヴァッジョ展を見たすぐ後だったので、そう言ってしまったんですね。レンブラントのつもりでした。(笑)
闇、舞台も表は華やかで明るいですけど、裏にまわると奈落なんて真っ暗ですからね、そういう印象があって、
絵は暗くなるのかなあ。黒という色は一番難しい色で、使いこなせたらいいなあと思いますね。。レンブラント
のように描きたいなあと。……………(思考と言葉がぶちぎれてしまったらしい。(^_^;))
……助けてくださいよ〜〜〜!

Q (^_^;)吉右衛門さんはそんなに絵がお好きで、お嬢さまの中には、絵がお好きな方は?

吉さま:ええ、はい、います。一番上と三番目が美術学校に行きまして、いえ、いっこうに目が出ないんですけど、
女房は反対してたんですね、普通に就職して普通に結婚してほしいと。僕も半分はそう思いますけど、好きな
こと、やりたいことをやって欲しいなあと。

Q どんな絵ですか?

吉さま:………不思議な絵ですよ〜!2人とも不思議な絵です。僕なんて、絵のモチーフにするものがわからない。
具象とも抽象ともつかない……どちらかといえば気持ち悪い。。

Q 画家でいえば、どんな?

吉さま:ああ、そういうのを嫌いますね。既存の画家と比較されたりするのを凄く嫌う。僕なんか、これを真似
できたら(とチラシのルノアールの絵を見る)いいなあと。本当にこの色が出ないですよね。こう見ると大した
ことないと思いません?(楽に描いてるように見えるという意味か?)でも、描けといったら描けない。
ちゃんと、子供の肌を描いたら子供の肌になってるし、中年の女性を描けばその肌になってるしね。
 
 モネの「カササギのある風景」ですか?あれなんかでも、見た瞬間を描いてますね、寒いというか、その場
の寒さ、雪の溶けるにおいや、わらぶきの匂いを感じる。こら、すげーなと。空気を描くってのは難しいです
よね、絵の前で自分を見つめさせる、感じて考えさせる、そして、いろんな絵を見て、いろんなことを考える
僕は絵が好きでよかったと思いますねぇ。印象も抽象もすばらしい。考えついたときの喜びというか。

Q それほど、絵がお好きだと、美術館などでも一枚の絵の前にずっといたいでしょうね?

吉さま:いたいんです。一時間なり、二時間なりいたい。でも、次の観光地に行かなくちゃ……
でも、だから、自分のモノにしたいと思いますね。コレクターの方も目的はそれなんでしょうね。
いつも、旅行に行くたびに、フィレンツェならウフィッツィー、パリ、ロンドンにも、たくさんあります。
僕は、そう買い物したいということはないんですね。でも、しがらみという…(笑)


 2002年 11月 4日 夜 記 も少しよ〜。  其の五  寝ても醒めても 表紙へ