5 Q 外国に行かれてもスケッチをなさったりするとか? 吉さま:はい。スケッチをしてると、首根っこ引っ張られてもってかいかれる。(笑)(猫の首っ玉つかまえて ひっぱってかれるよな動作)いつか、パリの美術館にゆっくり行きたいですね。 日本でも、芝居の合間に美術館へ行きます。思い立って行きますと、さあ、歌舞伎座から僕の足で15分くら い。すると必ず月曜日(休館日)だったりする。(笑) Q その点、ポーラ美術館は無休ですので。 吉さま:それは結構ですね。はい。ブリヂストン美術館とか。好きですね。ポーラも好きですけど。(笑) でも、思うんですけど、昔々に、アルタミラから、洞窟入って描いたり、外のね、板っきれや石に描いてるなら わかるけど、完全に画家の方が、アトリエで描くのと一緒でしょ?単なる記録じゃなく文化ですよね。 Q そうですね、太古から原始時代、言葉の無いころから、文化、芸術があるということですね。 吉さま:それで、友だちの、絹谷先生に聞いてみたんですね。すると、「たぶん、あーいう絵を描いたのは、 あの時代にも体の弱かった人間がいただろう、男は狩りにいく、でも、自分は行かれない、弱くて狩りに行か れないのが描いたのが残って、絵の中で狩りをしたのだろう」と。それで、僕も弱かったので、わかるんですね。 だって、画家って体弱いですもん。(笑)その気持ちわかる。遊びたいとかの願望を紙に描く。あ、でも、油絵 は、すっごい体力がいりますね。ピカソやなんか見ると、凄いエネルギーで、いいなあと思う。いっとき、日本 画も厚塗りして、油に対抗させようとしたらしい、絵も舞台もお客さまの目を惹くって難しいですよ。 (と、顔の向きを変え)こうしたとき、ある瞬間に全員が見てくれたら嬉しいですね。そういうときが、一番 見て欲しいときでもありますから。でも、他の役者さんの方をじーっと見てたりするし、立って、すーっと出て いっちゃう人もいる。ちょっと待てよ!と言いたいけど、言えない。(笑) 同じ色で塗っても作家によって違う色に見える。凄いなあと思う。あのねぇ、出てこないですよ。それがね、 素人の苦心…東洋的な感じにしようと思っても、どうしても素人が描くと画面映らない…どの色を選ぶのか が大変です。名画を見て、色彩感覚を磨きたいですね。……戦後はそれはないですね。(日本画が油の模倣を したようなこと。。ってことか??)自由に描けって言われるのは難しいですよ。歌舞伎芝居も真似から入る。 真似した方が安心ですからね。でも、それだけじゃいけない。死ぬまでに、自分なりのものっていうのが造れ ればいいですねぇ。 いい絵は恋人のように感じます。美術館に行くってのは恋人に逢いにいくようなものですね。それに、 たくさん、いてもいいわけで。(笑) Q これから、どんな絵を描きたいですか? 吉さま:…美女を描きたい。あはは。裸婦を描きたいですね。画家の先生に言ったら、モデルの人も 「吉右衛門がくるならはりきっちゃうわ〜♪」って、な〜にをはりきるのかな〜と。わかりませんけど。(笑) でも、女性の裸ほど美しいものはありませんし…若い方から、…そうでない方でも。(笑) 興味のあるものを描くのが一番なんですね。僕は女性に興味があるので…乞うご期待。ご期待ください。(笑) Q 吉右衛門さんは、インタビューなどでも、ちょっとヒネたといいますか、(笑)芝居のことなどでも、 ずいぶんひねて謙遜なさるようなことをおっしゃいますが、随分と変わったというか、自信がありますね。 吉さま:あ、はい。攻勢にまわっております。変に謙遜してもはじまりませんし、絵と舞台の違いで、残るのが よいかどうか、絵だと良いものが永遠に残りますし、舞台は、一瞬のもの、それもよしあしで、悪いものが ずーっと残るってこともありますしね、まあ、そういう時は黙ってればいいんですけど、自分が一番わかり ますしね。 Q 舞台で一ヶ月のうちでうまくいったなと感じるときはありますか? 吉さま:ありません。それは一生に一回あるかどうかでしょう。生身ですから、必ず何かありますからね、 台詞を言う前にくしゃみが出そうになったり、体調のよくないときもありますし。死ぬまでに一回あるかどうか。 不完全ですからね。それが人間だと思いますけど、はい。一生のうちに一度あるかないかでしょう。 Q 最後に、絵が好きでよかったことは。 吉さま:………そう、絵を見ることは恋人に逢いにいくようなもの。そのときどきで、同じ絵を見ても感じる ことが違うし、いろんな絵を見ていきたいですね。いろいろ感じさせられて、考えさせられて、絵が好きで 絵を描くことが好きでよかったなあと思います。
と、こんな感じでした。とにかく、文章にすると伝わりにくいと思うのですが、すごく夢中。というか、 ある瞬間などはムキになる子供のよな吉さまの語り口でした。かわいかった。かわいかったと同時に、 あの年齢までああいう純な心もちを抱えたままということは、いろーんな切ないこともあったろうなあと。 ま、ナイーブにして純粋、シャイで頑固、傷付きやすいけど好きなものには一途で(ある意味しつこく) 優しいけれども自分の決めたことには妥協を許さず…そして、なんだかんだと言っても、ご家族あっての 吉さまだなあと。。。嫉妬の炎も(一時)鎮火するよな感じでしたわ。なんつーの…一瞬ですけど、 もっとしゃきしゃきせんかーい!なんて。。。(^_^;)いへ、ま、あのナイーブ偏屈純粋シャイシャイ頑固 で人見知り。。的な、素のなみのひさのぶくんモードから、波野辰次郎になり、中村吉右衛門になって、 舞台に立ったらその役になりきる。と、その舞台の姿が素晴らしいのも、そーいうひさのぶくん部分をお 持ちだからですもんね。。 と、われながら、何書いてんだかわからなくなってきまひた。そして、レポの最後の方は、お話メモより も、お姿を見つめることに集中してましたので、無理からまとめた感もなきにしもあらず。 とにかく、貴重なセミナーでございました。少しでもその場の雰囲気が伝わっていればいいなあと願いつつ。 2002年 11月 4日 夜 記
寝ても醒めても 表紙へ