影までもでっかい
2003年 歌舞伎座(夜の部) 4月 2日、13日、18日、25日 内蔵助です。このたび、「之」抜き表記にしました。なんとなく。 そんなわけで、好みとしても芝居の醍醐味としても元禄よりは仮名手本なのですが、 ま、決まったからにはしょーがない。初日昼の部を観に行ったついでに夜の部も 観てしまいました。なぜならば・・・某ネットオークションで半額になる券がいっぱい 出てました。数日間の日にち限定で何種類かね。で、念のためにゲットしときました。 ま、使わなくてもだめもとで。んがあ、ああた、かぶりのほぼ中央ちょびっと上手 が、アタシを呼んでいるではありませんか?おーっほほほ。 というわけで、期待値低めで観た大石最後の一日は、見応えがありました。
と、↑を書いたのは6月3日でした。それから幾月・・・嗚呼・・・ 千龝楽の見納めからでも、四ヶ月以上経ってしまいまひた。 回想の内蔵助・・・おぼろげな印象しか残っていません。そのおぼろげな印象の中でも 強く目に残っているのは、堀内に呼び止められ、下手部屋で話しているとき、堀内が 義士を誉めそやし、ひょっとしたら助命になるかも。などと興奮してしゃべっているのを 微苦笑でききながら、上手中庭(?)にひともとの紅梅。はらはらと花びらが散る。 堀内の話に多少辟易したように上手を見やる、内蔵助、紅の花びらがはらはら。 それを眺める内蔵助の風情が素晴らしかったです。事成し終えて、眼前の堀内の言動 などものともせず、最後の刻が近づいていても、花を見やる風情。平常心のままながら この世の美しいものへ対する末期の視線。
胸のうちの静寂。達観などという気負った言葉では表せない内蔵助のしんとした心象 風景が花びらを見やる視線ひとつで伝わってきます。うまいねぇ。播磨屋。と溜息。 なんてまあ、あなたは立派なのかしら。なんてまあ男子なのかしら。なんてまあもののふ なのかしら。なんてまあ、優美なほど優しいのだろう。そして、どうすれば、あそこまで 肚がすわるのだろう。 見とれながらも、凡々人の私には、ちょっと遠くに感じました。 内蔵助、あなたは本当に死が怖くなかったのか?それとも死への恐怖すら受け止めて 自分自身を英雄などとは夢にも思わずに、淡々と確固たる気持ちで初一念を果たしたあと の日々を心静かに生きることができたのか?討ち入り後の内蔵助さんは、すでに 神がかった偉きさで、それでいて人間の情味もある極上の男でした。
しかし、芝居としてなら元禄より仮名手本の忠臣蔵の方が私は好きだわあ。元禄は理屈っぽい。 リアルが長い台詞と涙に濡れている。ちょと鬱陶しい。 それでも、大石最後の一日は、切腹という死へ向かう場面だけれども、事成し終えた内蔵之助 の達成感により、結果は死だけれども、明るさに包まれた場面なのでまだ救われるけど。
幕府はイケズだと思いますよ。はい。内蔵助はともかく、二ヶ月もお預けくらってさ しかも好待遇でさ、そりゃ、儚い望みももっちゃいますよ。義士たち。今までの緊張緊迫から、 平穏な、衣食住に不自由しない環境になって、しかも、ひょっとしてもしかして万が一、 「誉の義士、武士として他家に仕官が叶うかも」なんて希望も見えちゃったりして。 いかに、武士で命がけで決死の思いで今まではきても人間なんて弱いもんだから、ぷっつりと 心の張りの糸が切れちゃって命が惜しくなっちゃった人なんていないのかなあ? やっぱりそこがね、どうしてもね。 ま、史実としては、「好待遇だったのは真実でない」という調査結果を書いている本とかも あったりして、本当に本当のことはわからないんですけれども、それでも2ヶ月お預かりの 時間があったのは事実だし、緊張から開放されたあと、激情が去ったあと毎日毎日、何を 考えて義士が過ごしていたのかと考えると夜も眠れませんよ(大げさ) 命と引き換えにでもなさねばならぬ使命を運命として身におう人間もいる。 っていうのは、現代のボケたアタシにも何となくはわかるような気がするのだけれども、 潔いというか執着がないというかなんつーの、忠臣蔵ってさ、まるっきりのフィクションだったら、 ウソくさいくらいよくできてるよね〜。細かいとこはそりゃ作者のフィクションとしても、 大筋は事実なんだもんね。主君が城中で刃傷→即日切腹お家は断絶→ふるいにふるった家臣が 2年に近い間の潜伏→討ち入り→切腹 いや、歴史ってのはエキサイティングよね。ほんと。
そんなわけで、今や回想の彼方にうっすらと霞んでいる内蔵吉さまなのですが、 後は、最後の最後、「では、お先へ」とか言っちゃって花道を引っ込んでゆく白装束の 姿かなあ。テレビの「忠臣蔵〜決断の時〜」の最後でも、白装束で、空を見上げてにっこりでした。 ・・・そんな、幸せそうな顔するなよ。。。(水10の落武者風で) 切なすぎるぜ。内蔵助さん。 と、源五右衛門とおみのちゃんの大不幸カップルも可愛そうだったねぇ。 つーかさ、おみのちゃんさ、生きてりゃいいことあるって。いや、マジで。源ちゃんのことは 秘めた想い出にしてさ。町人になってもいいじゃん。たまには芝居でものぞいてさ。 もっと命を楽しもうよ。って、それじゃ、芝居になんないんだけどね〜。 でさー、ま、大石最後の一日ってくらいだから、内蔵さんが主役でいいんだけどさ、 芝居だと義士があまりに脇すぎんだよねー。なんていうかさ、内蔵さんのでかさについてけ てないっていうか、主役を引き立たせるために目立たないっていうんじゃなくて、 主役やっても目立たないんじゃないか?くらいの勢いで。。 まあ、源ちゃん以外の義士はそこに居るだけで、話にからんでこないから しょーがないか?しょーがなくないよ、しょーがならお庭にいっぱいあるよ。 って、ちがーう!ん?内蔵吉さまはステキだったよ。うん。ほんとに。
あと、内記くんも大名の息子@少年の潔癖純粋がよかったです。でも、化粧が濃い。 眉と口紅がくっきりすぎ。まあ、若くて肌がきれいなだけにうす塗りでも濃く見えるのかも。 後はおみのちゃんはよかったです。でもねぇ、好悪だけで言ってすみませんが… 歌昇さんが悲恋の若き義士ってのはねぇ。台詞もよっく通るし、悪くはないんだろうけど。 映像で見たことのあるだけの、仁左衛門(当時孝夫)さんのイメージが強くてねぇ。 なんか、アタシにとってはあんまり魅力がない役者さんかなあ。がっ、吉さまとはよく一座する からねぇ。見ないわけにも。。。(^_^;)いや、こればっかりは好みなんで、すみません。
やっとというか、今ごろというか、なんとか9月になる前に感想文が書けました。 ほっとしました。さ、これで心おきなく… ハゲとボロボロヨレヨレと山の神だっ!
2003年 8月29日 記 寝ても醒めても 表紙へ