怪力夫婦になりますねぇ
2004年 歌舞伎座(昼の部) 2月 1日
笑顔百万両ですわねえ。うっとりです。気は優しくて力持ち。強くて、かっこよくて、 大きくて、かわゆくて、男らしくて、勇気も情も頼りがいも、色気もあって、朴訥で、 けして粗野じゃない六助くんでした。 なんてんでしょう。物語の筋がどうのよりも、食べてしまいたいほどかわゆらしかったです。
まあ、梨園には吉さまより実年齢が高い先輩がたくさんいらっしゃいますが、 でも、吉さまご自身も今年は赤い年でございましょ?それがまったく感じられませんわ。 きんぐおぶ苦悩なお役やら、人間の中の多面性やら複雑屈折な面を表現する役がらも、 そりゃ素晴らしいのですがこの六助さんの青年ぶりときた日には、役柄でも、実年齢でも 「青年」にはほっとんど惹かれたことのないアタシが惚れましたわ。 若い人が技術や経験の裏付けなく、若い役を、どちらかといえば生のまま体当たりで演ずる のもそれはそれでそれなりの魅力があるでしょうけれども、実際に若いってのと、不特定多 数の観客から客観的に「若い」と見えるのとではのではかなり違うと思います。 それは「心根」も含めて。 実年齢が若い方がそりゃ、じっとしてるときの顔や体型はきれいかもしれませんが。 それはそれだけ。もちろん、「それだけ」にも価値はあるけれども。
姿の美しさもさることながら、セリフの心地よさ、数々の決めポーズの確かさ、最高です。 まあ、想像でしかありえないのですが、六助くんの善良さや、人懐かしげな笑顔、これも全開 笑顔ではあるけれども、そこはかとない男の含羞を帯びた美しい表情、こりゃ、吉さまの生得 のものでしょうねぇ。アカラサマな愛嬌でなく、男の含羞を帯びた極上の愛嬌であるとアタクシ 断言させていただきます。 察するに、とてつもなく頑固だったり、こだわりがあったり、偏屈っぽいところもおありかも しれませんが、根底が「善」であるということ。そして、どこまでもはにかみを抱いた男心をお 持ちであると。 想像にすぎなくても、その想像を客に抱かせるってとこが「役者の力」なんじゃないかなあなんて思います。 結局は、観客各々の感じ方だもんね。 それに加えてのセリフの上手さ、形のよさ、演技の上手さですわね。義太夫狂言だったので、セリフも とても気持ちよかったです。
ま、お話そのものは、深く考えると「お園ちゃんよ、そんなに家族を殺されちゃって、悲惨だわ。。 でも、仇討ちしたからってそれで問題解決なのか?」とか「お園ちゃんの母者人っていつ来てたんだ?」 とか、いろいろ、考えちゃいますが。けっこー人間関係ややこしーし。 (んと、六助くんの師匠が一味斎さん、一味斎の娘がお園ちゃんなのね?でも、養女らしいのよね。 で、一味斎さんと、お園ちゃんの弟妹が微塵だんじょーに殺されてんのね?弟は自害だっけ?それと も弟じゃなくて、妹の亭主??ま、芝居には出てこないからいいか。六くんの師匠の一味斎さんが、 生前に六くんのお嫁になるのはお園ちゃん。って決めておいたんだよね?で、弥三松坊ってのは、お 園ちゃんの妹の子=お園ちゃんの甥っ子???と、微塵だんじょーって、仕官するために、六くんに 「母者人を喜ばせたいから負けてくれ」とか言って勝ったら勝ったで、扇の要で六くんのでこちんをが つんとかやってるっしょ?この、やーな奴って、そもそも誰?一味斎一党になんの恨みがあったのか??? 実は京極内匠なんだってさ)<思議歌舞伎手帖参照しつつ、把握、疑問は疑問のまま潜伏中>) 私、そういうとこあんまし気になんないんで、悪い奴は悪い、それを討ちにいくんだもーん! 坊にも討たせてやるからね〜。なノリで観てると爽快です。
子役ちゃんとの絡みだと、父性を感じさせながらも、自分自身も親に先立たれちゃった さみしい男の子な気持ちがよっく出ていて、父性に憧れながら、自分の母性本能も(あるのかよっ) きゅんとなっちゃいます。 お園ちゃんとの絡みだと、この怪力男女ってば、ともに20代(たぶん)。 ま、江戸時代なら、けっこーな実年齢なのでしょうが、お園ちゃんが六助くんを 「ととさんの決めた許婚」と知ると、いきなり、くねくね色気少女のようになり、 それを受けて、六助くんもてれでれはにかみ少年のようになり、嬉しはずかしで、 照れまくりながらも仲良くなってくお2人、このへんだったかどーか定かでない のですが、「ご両人!」の大向こうがぴったしでした。
一時間十五分、飽きさせない。幕が上がってすぐに、六助くんがいて、最後まで 出ずっぱり。2月に一演目だけってのは、かなり不満でしたが、1役だからこそっていうか 1役ゆえっていうか、初日とも思えない充実度でした。 午前中からの舞台だけど、声がよく出てらっしゃるし、セリフは入ってらっしゃるし、 (吉さま以外の出演者も)子役ちゃんがお園ちゃんに抱っこされて話すところで、ちっとつま りましたが、お園ちゃんの腹話術師状態のきっかけで、すらすらと言えたし、みんながイキイキ していたように思います。
正式な型の名称とかわかんないんですけども、六助くんに、決め決めの型がいっぱいありまして 決めて静止の状態がとてつもなく、端正で美しゅうございます。はい。 特に、中央段々のとこにナナメ横座りになって、ちとうつむき加減に黙考してるとこなんざ ああた・・・横顔の凛々しさと、骨格の正しさと、そして、内腿がちらとのぞくナマアシ! 眼福でございます。太くなく、細くなく、人工的でもなく、生々しすぎるでもないオミアシの美しさ。 嗚呼、麗しの白塗りナマアシ! で、足裏がきれいよねぇ。吉さまナマアシのときには、いつも感じるんですが、吉原の高級 遊女もびっくりの足裏かかとの美しさ、ケア方法を教えて欲しいです。
と、吃又でも、幡随院長兵衛でも(他にもいろいろ)ある、劇中着替えですが、これもまた いつ見ても、心地良いです。女性よりも、男性のが着物の着つけは簡単でしょうが、裃つけるし、 短時間で観客に見せながら自然に、っつーのは着物自分で着られない私としては、ただただ、 帯をしゅしゅしゅっと結んでったりする一連の動きに見とれてしまいます。 介添えするお園ちゃんも甲斐甲斐しく、良い夫婦ぶりでございました。 常々、吉さまの女房役や恋人役に不満があったりもするアタシ、時蔵さんはいい女房さんじゃない ですかねぇ?雀右衛門さんも大好きだけど。たっぱ的にも体型的にも年齢的にもバランスのよい カップルだと思うので、なるべく多く共演していただきたいです。 雀右衛門さんの八ツ橋も最高ですが、時蔵さんがやったら、こりゃまた、「心ならずも」で縁切りする のだけれども、サディスティックな感じもほどよく出そうだ。でも、儚いうらぶれた憐れさも出そうだし。 吃又のおとくさんなんかも、美人すぎるけれども、ちゃきちゃきしゃべり、旦那さまらぶ!の感じはよさ げだし、知盛を吉さまがなさったら、すけのつぼねさんなんて綺麗よね。品もあるし。 大蔵卿なら常盤御前だっ。あれなら、義経パパや、清盛に愛されたのも納得だ。納得できないこともあるからなあ。。
仁左衛門丈、團十郎丈、玉三郎丈の同年代の盛りの役者さんとの競演がなかったのは残念だけれども 「毛谷村」単体で考えるならば、充実して、バランスのよい一本です。はい。 なんといっても、観終えたあとが爽やかですし、今年は、年男さんだけど、昼の部では節分豆まき なかった由。それでも、節季がわりの新春を幸せに過ごせそうなめでたい舞台でした。
で、三階から観てたんです。ええ。三階だと、まま、気絶しがちになり、鑑賞眼がないので、一階か ぶりで観るときほどノレないことが多々ありますが、これは、三階で観てて、観てるうちにノリノリになり、 ちと前のめりになっちゃったりもしました。自粛はしてましたが、ご迷惑おかけしてたらごめんなさい。 と、ちょうど、下手に後ろ向きに座ってる六くんに、黒衣さんが、小さなまあるい鏡をかざし、それを 見ながら、パフでお顔をおさえたりするのが見えて、得した(?)気分でした。 双眼鏡ももってかないくらい、忘れ去ってた記憶を甦らせるための予行演習くらいの気持ちで行った 初日でしたが、逢瀬の回数増やしたいくらいの出来でしたわ。うふ。 あ、だけど、位置的に、最後の幕切れの紅梅後ろ襟にさしての決めは、紅梅が顔にかかり、お顔の 表情が梅ごしだったです。それと、最初から位置的に花道見えないのは覚悟の上だったんですけど もー完全に完璧にぜんぜんっ見えません。花道そのものは通りませんが、花道つけぎわで坊との絡み 芝居があって、けっこーセリフだけ聞いてるとよさげだったので、次回、一階で観るときがますます 楽しみです。あの紅梅の枝が欲しいわいの。でへへ。。 この上は、風邪やらインフルエンザやらで体調崩すことなく、千龝楽まで心身ともに機嫌よく舞台を 勤められることを祈るばかりでございます。
そんなわけで、 六助くんに逢いにゆこっ!初日観劇感想文でした。 2004年 2月 4日 記
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