そして、立花屋さん見世先の親はん=権八さんが強請るとこ覚えてない。栄之丞浪宅、廓のまわ
し部屋での、3ショットも覚えてない。寝てないよ。起きて見てたが覚えてないのぢゃ。。
東京の舞台と違って、一回しか観られないと思うと、ほんとの一期一会。吉さま部分だけしか記
憶されてない。やはり脳には限界がある。で、
立花屋さんの待ち合い小座敷で、八ッ橋を待つじろざさんと仲間。五月蝿がられるから、呼びに
やらなくてもいいよぉ。と照れ隠しのじろざさんの元に、呼ばれる前からやってきた八ッ橋。
ここが、あの煙管の嬉しがらせ。の場面だが、はい、小座敷に上がるとき、じろざさんが、八ッ
橋の手をとって上にあげますわね。嬉しそうだ。もー下にも置かないでれでれちやほやぶり。
が、嫌らしくない。かわいい。けなげ。そして、ここまでやるとは思っていなかった。。八ッ橋
の手をとって上にあげる。その八ッ橋の手に触れた自分の手に、、、じろざさん、うれしそーに
チュッチュチュッチュ♪って。うーむ。他の役者ならとぅーまっちかもしれない。が、けなげに
可愛いから許す。で、商人仲間が「あまり、八ッ橋を褒めるとじろざどのに怒られる」というよ
うな台詞をいう。と「どうせ、これは売り物買い物だから、わしが来ぬときお買いなさいよぉ」
とじろざさん。煙管をつけられて、嬉しがってるけど。
これは痛いな。その場で見てるとそんなこと微塵も思ってない。とわかるような芝居ぶりではあ
るが、やはり、これはなぁ、冗談であって見得であって強がりであって、今が絶好調の幸せだか
ら言えることだろうとは思うが、これぢゃ、八ッ橋、本気では惚れられまい。お客としてしか。
そこに限界があったのかなぁ。が、次の瞬間に八ッ橋から差し出された煙管をひれ伏すようにし
ていただくじろざさんのが真実なんだろな。
そして、浪宅→お座敷だったか。???
お座敷場面で、まだ八ッ橋が来る前に、仲居さんの酌を受けて、仲間の話やらをにこにこと聞い
ているじろざさんがいい。あまり台詞のない、居どこにいてうなづいたり、捨てぜりふをしゃべ
る吉さまは何の役でもいいが、この酌を受けて「ありがとう。ありがとうよ」と呟くように、飲
んでるんだけど、こういうのいいねぇ。役の仁の良さとも合うし、実際のご自分の育ちのいい御
曹司の部分もそこはかとなく漂う。大体、役になりきりながらの、吉さまのこの「ありがとうよ」
とか「ごめんよ」とかいう捨て台詞はいいんだなぁ。ほんと。だから、居どこにいて、他の役が
しゃべっていても目が離せません。で、仲間同士で酔ってちっと喧嘩になるかな?ってのを押し
留め、「恋より他は〜ございませぬなぁ」そうね。恋に恋するじろざさんだ。
話をつけよーとやってくる、権八と栄之丞、通りすがりに見かけて、ふと「あれは八ッ橋花魁
のお客かい?」気になって「どれ、わしは六番の座敷へ」「これ、粋たお方は廊下とんびはしな
いものですよぉ」でおしとどまる。さ、いよいよ縁切りへ。。
まわし部屋で、2人からやいのやいの言われて、愛想づかしするわ!の八ッ橋。浮かぬ顔で、じ
ろざさん一行のお座敷へ。
かわいい。。すんごいかわいい。。八ッ橋でなくじろざさんが。愛想づかしの台詞を聞き終わる
前のじろざさんのかわいらしさったら、思いだしても抱きしめたい。わちきは上せてなりんせん。。
を聞くや医者を医者を!と大騒ぎ、花魁の気の鎮まるまで、皆黙っていてください。と口をふさぐ
仕草。たぶん、こーいう言葉で余計にイライラの昂じてくる八ッ橋。そして、医者はいりません。
わちきはただ一つ気に障ることがありんす。という八ッ橋の話を聞きモードに入るじろざさんが、
心配げながらまだ、とろけるような顔。この「うん?なーに?」というような表情から、話の途
中の「うぅん?」の声音。惑溺の無防備な顔。
話が進んでいくにつれての、驚き→悲嘆→説得→憤怒→諦念→怨恨→未練etc.の心の揺らぎが手
にとるようにわかったような気がしました。正直、前半のじろざさんの八ッ橋への溺愛崇拝ぶり
が現実の男離れしちゃって、無垢で可愛らしいだけに、現実の社会でバリバリ稼ぐ大商人@男ざ
かり@人もいいけどスケベ心もあるよ。な感じが希薄だったので、満座の中で恥をかかされたか
ら八ッ橋を殺す。。では説得力に欠けるかなぁ。。と。でも、この殺しの動機ってのは大切で、
想像でしかわからないけども“男の恥”というものをどー納得させてくれるのかな?と。やはり、
与えたものの大きさと、女がわの罪の意識があってこその殺し。無軌道殺人ではあって欲しくな
い。
前半の周囲に見せびらかしていながらも、八ッ橋に溺愛のじろざさんから、一転、愛想づかしを
聞きながら、ちょっとしつこいくらいに周囲に目をやるじろざさん。これは外聞を気にしている。
ということもあるけれども、助けを求めている。ということと、偶像の目撃者としての周囲が無
残に壊されていくのを止めたい。という目のように見えた。
花魁、、そりゃ、あんまり、、袖なかろうぜ。。から、恨みと説得の理屈にかかるのだが、この
話しながら、激昂していくじろざさん、「なぜ初手から言うてはくだされぬぅ」までは、哀しみ
の色濃い、未練がましげな風。そこから、人騒がせに身請けされた方が、悪いと思ってぇ、先に
言ってあげんのがアタシの実のあるとこよ。を聞いてからのじろざさんの怒り泣き、あばたの下
の顔色が紅潮してくるのがはっきりわかる。
怒りの中にある切なさが、びゅんびゅん感じられて、観客も毛細血管切れながら、たぶん紅潮し
てるだろう。劇場中が、水を打ったような静けさでじろざさんに集中している。粉微塵に砕け散っ
たじろざさんの宝物。間夫がいても、佐野へ行くのを嫌がっても、宝物の夢でいてくれたならば、
実際の男関係なぞにはきっと目をつむったと思われるじろざさん。つっぷして、哀しみに打ちの
めされ、肩を震わせている。
(もう駄目だ。この宝物は修復不可能)身請けは思いとどまった。ときっぱり。「振られて帰る
果報者・・」怒る治六をもなだめ、茶屋のおかみにも丁寧に挨拶。「ありがとうございました。
。あ、ありがとうございました。」血を吐くような挨拶。そして、佐野に帰る用事もあるし、そ
れが済んだらまたあすびにきますよ。と去ろうとする。これらの言葉もウソではないのね。諦念
と正気もある。しかし、八ッ橋は憎い。
憎い。というよりは、もうこの時点で、夢の残骸となっているモノを許せない。存在させておく
わけにはいかないというような。
人のいい優しい人間がこんな風にもなれる。というか、人間の危うさが実感できる。
「ことによったら…」のすさまじい目つきから、九重に羽織りを着せ掛けられ、「ありがとうよ…」
と言うじろざさんの間に、違和感はない。人外に堕ちたじろざさんも、他人の親切に心から感謝
もできるじろざさんの統一感において。
さ、次は殺し場。
もうちょっと、つづく。。2000年
5月30日夜
あーながっ!んでも、書いてたら、こんなことに。。
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