気くたびれた。ふらふら…
って、そりゃ、くたびれもしますわねぇ。長右衛門さん。。養父はいい人だけど、実父ぢゃない し、義理と恩義で頭上がらないし。継母は絵に描いたようないぢわるさで、その連れ子の(だよ ね?)弟ともどもお根性悪で、いぢめるし。隣家のお半ちゃんとは、つい深い仲になっちゃうし、 しかも一度の契りで懐妊しちゃうし。女房はよく出来た女房だけど、できすぎてて気ぶっせいだ し。。自分自身男の更年期(たぶん)の年頃だし。 というわけで、なんだか八方ふさがりの長右衛門さんですが、隣家の娘と出来ちゃわなければ日 々のストレスはあっても、そう追いつめられることはなかったでしょうねぇ。 「あー、もーあっちもこっちも五月蝿いなあ」と思いつつ、平穏に日々は過ぎ、そのうち御隠居 お目付けの養父も死んじゃうだろうし、継母もいつかは死んじゃうしさ、義弟はうるさいけど、 一人になったら何もできないだろうし。魔が差す。。ってことが人間の人生にはあるんですなぁ。 旅先の宿で、偶然同宿になり、偶然お半に助けを求められ、ついついひとつ布団に寝てしまった。 “眠った”んぢゃなくて“寝ちゃった”んですねぇ。お半の気もちが今ひとつ良くわからないん ですが、きっとお半は、前々から、長右衛門おじぢゃんに仄かな想いは寄せていたんでしょうね。 隣家のステキなおじちゃまで、たぶん赤さんの頃から、「隣のお家の、可愛いとうさん」として 可愛がってももらってたんでしょう。かあいらしい赤さんから、はっとするような美少女に成長 していって、たぶんその当時なら、10代でお嫁入りでしょうから、まぁ、13,4でも子供と いえば子供だけど、限りなく女に近づいてる子供。って感じでしょ。旅先で、お供の丁稚長吉に 言い寄られて、はっきり言えば襲われそうになった。ばあやは旅疲れて、熟睡してる。偶然助け を求めて入ったのが長右衛門の部屋だった。そーぢゃないでしょ?どっちが先に泊ってたのかわ かんないけど、ある時点で長右衛門が同宿してる。と知っていて、部屋も知ってたんだな。きっ と。単純に助けを求めたなら、ひとつ布団に入ったところで、長右衛門さん手出さないでしょ? 最初は断って、もうすぐ夜も明けるから、部屋に戻れ。と言ったのに、聞き入れず、俺も眠たし。 つい、布団へ入れてしまった。。。って。。おいおいちょーさん、眠かったんなら、眠らんかい。 ちょー若いならまだしも、いっくらついふらふら。。っても、お半が本気で嫌がれば、分別盛り で、欲望のコントロールもできるであろうちょーさんが手出しちゃうとは考えにくい。 お半ちゃんの方に前々からの淡い想いがあり、たまたまその想いを爆発させる機会になってしまっ た。って感じぢゃないかしら?長吉なんかに狙われちゃかなわない。偶然ここにちょーおじちゃま が居合わせたのもなにかの因縁。長吉に襲われかけたのがほんとに恐くて嫌だったのも真実だろう けど。、髪も壊れちゃって、嫌いではないおじぢゃまとひとつ布団に寄り添ってたら、テンション あがっちゃって抱きついたりもしちゃったでしょ。で、「おじさん、好き・・・」くらいは震え声 でつぶやいちゃったかも。 だったらねぇ。。男ぢゃないからオトコの気もちわからないけど、うーん。 で、2月3日に見たときの感想を読み返すと、「惚れあってる2人」ではない。みたいなこと書 いてあって、確かにちょーさんがあまりに義理や世間を気にしすぎだし、女房にはすまない心根だ し。でもねぇ、縁を切っても隣同士、会わなくなるわけでなし。。なんてこと言ってるし、俺を諦 めて嫁入りしろや。なんていってるし、って、あんたの子供を身ごもってんだしさ、とりあえず、 こっそり産んで、里子にでも出しちゃって、んで、何くわぬ顔でお嫁にいきなよ。。ってことだよ ね? うーん、そんなことを言うちょーさんと、ほんとは死の決意をしてるちょーさんとしっくりこない なぁ。しかも吉さま=ちょーさんは、玄人とは遊んでるし、以前に心中で死に損なった、割と道楽 者。って面を強調しないで演じてらっしゃるからよけーにしっくりこない。 吉さま的ちょーさんは「これでもか苦悩!ザ・思いつめてます僕!真面目なのに魔が差しました・ オレ」的な色の濃い、ちょーさんだし。でも、そー言うしかないか。 で、3日に見たときよりも後半の方が「あ、ちょーさんなりにお半は愛しいのか」って感じられま したが、私の好みでは、もっと狂ってほしかったな。 お半の置き手紙を読んで「かわいやかわいや〜」って泣き絶叫するとこがねぇ、とっても良かった んだけど。やはり、浮世のしがらみと因果応報の結果として死ぬ。って感じなんだなぁ。もっと、 もっと、お半に魅入られちゃった感じが欲しかった。道楽者の面を控えめにしてらっしゃる。とい うことは実直真面目な人間が惑わされ魅入られてある種、狂っていってしまう。。って演じても説 得力あるし。逆に道楽者の面を強調してたとしても、「この娘に魅入られて堕ちていく」といった 退廃的な底無し沼への誘いみたいなのでもよかったんだけど。 あと、いざえもんぢゃないから、くたびれたから寝ましょ。ってとこで笑いが起らないのは当然 なんだろけど、和事でもなし、どちらかといえば辛抱役。なので、ほんとに疲労して、気も重いか ら寝てみる。でいいんだけど、やはりあれは不て寝の一種だろうし、もうちっと現実の人間のおか しみ。ってのがあっていいと思う。くすり。とも笑えないんだもん。唐突にあのデカイ体でごろん だから、最初とまどったっす。 吉さまとしては懸命に柔らかく、しかも目立たぬようにきちんと長右衛門にはなっていらっしゃる が、やはり、違和感がありました。難しいお役と思います。ただ、自分の科白がなく、居どこに じっとして、ふしめがちあるいは目を閉じて、座ってらっしゃる姿がイチバン長右衛門らしい。し ばしばあの姿は何もしてない。だけに見えがち。役者さんによっては「居眠りかいな?」と思うこ ともあり。でもさすがに吉さまは居どこにいて、何もなさってないときも上手い。ちゃんとその役 のままで、何もしてないのに存在感があり、かといって絶対に悪めだちはしない。長右衛門に限ら ず。だから、私は吉さまのお役で、ただ居どこに座ってじっとしてるときの姿を観るのがとても好 き。とはいっても、この舞台に関しては、長右衛門、目をつむってうつむく。。の横で、長吉がバ クハツしてるんで、観てしまいました。だってぇ、前髪づくしとかさぁ、がんじ〜=長吉、絶好調 なんですもの。というわけで珍しいものを観たなぁ。という思いでして、この長右衛門さんに、惚 れられるか。。。と問われると実際、返答に困る私なのでした。。 まぁ、観るたびに楽しみだったのは、継母おとせ=坂東竹三郎丈と義弟儀兵衛=坂東吉弥丈との かけあいと、やっぱり、鴈治郎丈!の二役でした。特にやっぱり長吉どん。 2000年 3月26日 記
2000年 2月 3日(3階ろ列14番)11日(い列25番)14日(3階ろ列28番)21日(い列17番)26日(い列35番) 歌舞伎座 夜の部
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