神のいない荒事 ニッポンニッポンって、ちと煩い
2003年 歌舞伎座(昼の部) 4月 2日、13日、25日 ニッポン、ニッポンって・・・五月蝿いのよ〜。ナショナリズムなのか?初上演時は十七ヶ月の ロングランだったとかの、国性爺合戦、現代の私の目から観ると、なるほど見た目は、派手だし、 今よりも異国は遠く、そのエキゾチックさや、得体の知れないものへ対しての日本人としての矜持っ てのがわからなくもないけれども、どうかなあ?これ、面白い?ってきかれたら私としては・・・ つまらん!かった。 荒事の真髄は、たぶん、善悪を超えたパワー、何ものをも超越する、まったく抑制のない、 いわば、心は赤子、その赤子の魂に超人的な力と知恵と破壊力がそなわったものだと思うのね。 子供の心で。 なんてっても、子供はすぐに物心がつくし、人間としての思惑なんてのが発生しはじめてから の子供の頃ではもう遅いのね。赤子のごとく欲望のままに天衣無縫に、いえば我がまま勝手で、 しかも絶対的なパワーを兼ね備えた人物(?)というか、神、それも西洋の青白い自己犠牲を 強いる神でなく、人知のおよばぬ、理屈のない荒ぶる神であること。 これがそうは見えなかった。隈ののる立派な綺麗な顔で、上背もある見事な外見ながら、 私としては、夜の部の内蔵之助よりも、素顔がかいまみえるような気がして、部分部分では 芝居の醍醐味を味わったものの、結局、三度観て、三度とものめりこめなかった。 吉さまは、抑圧された複雑屈折な役がいいのだ。抑圧されて耐えて秘めて苦しんで、なおも 自分を貫き通す、人間離れしつつも、人間のエキスを搾り出して純化したような役がいいのだ。 と再認識しました。はい。とにかく、荒ぶる神には見えない。
きめきめの姿で、腕を伸ばして太刀を構えたポーズなどは、息をのむほどに美しいのに、 拵えと自身の上背とあいまって、ものすごくでっかく見える瞬間があるのに、すぐに“人間” になってしまう。虎退治のあとの中国人ずを元服させるってんで、ばばばっとみんな月代に なっちゃうとこもねぇ。爽快じゃなくて、反発を感じちゃったし、後ろ向きの、 やっとことっちゃーうんとこなー!も声のよさも声量も十分なのだけども、いまひとつ。 南無三!紅が流れたあっ!も、ここはもー激怒でしょ?それこそ、荒ぶる 神として、荒事の童として、1000%の激怒。これもあんまり。。。いや、期待値がもんの すごく比叡山よりもエベレストよりも高かったのでねぇ。 楽しみにしていた六方二回も、期待が大きすぎたせいか、期待を上回る迫力ではなかった。 全体にサラサラしているというよりは、全体にかなり無理して和藤内なのじゃなかろうか? と。 虎退治の場もね〜。退治には見えないなあ。もちろん、荒ぶる神なのだから、虎ごときは 退治じゃなくて、じゃれ遊びながら手なづけちゃうぜ!でいいんですけど、遊びでも本気に なって倒す意欲まんまん。に見えなかった。 女たちもねぇ。雀右衛門さんは、哀れにちっちゃくて色っぽくてあのびらびらお地蔵さん衣装 が思いのほかに似合っていたし、母者人は、いどこで他の役がしゃべってる間も、泣いてるふり で手ぬぐいを目にあてる仕草をしたり、役になりきってとてもお行儀もよく、自分の出番では、 着物の襟元や脇に汗がにじんでるのがはっきりわかるほど、熱演してましたが、どうもねぇ。。 特に母者人は、国際結婚しちゃっているがゆえに(?)ニッポンニッポンて五月蝿い。 ほいで、甘輝、吉祥女、母者人の3人場面では・・・3回観劇のうち、3回とも気絶。 そして、3回目にいたっては、甘輝館にやってきた、和藤内、父上、母者人、吉祥女の場面で 父母が吉祥女とやりとりしてましたよね?和藤内は、途中たしなめられてほっぺふくらまし表情 したりするくらいでずーーーっといどこで座ってるとき。 この時も、吉さま和藤内だけを見つめ倒そうとしていたら・・・嗚呼、まぶたが重い。。。 角度的にはばっちし視線が合う位置関係(もちろん、吉さま的には、和藤内としての視線がこっ ちにきてるだけなんだけど。や、それでも物体として認識はされる位置関係だ。) まぶたが鉛のように重い。。。 うう、しばばばばしばしば、まばたきしてもまぶたが重い〜。瞬間気絶。→目を開ける んが、もーひきこまれる〜。つーわけで、二度目の吉さま出番場面で気絶。。。ま、牡丹燈籠の 伴蔵のときほどではなかったが。。
んでねー、見慣れないせいなのか、衣装も私の好みとしてはイマヒトツ。。序幕の青の拵えは いいとして、その後の真紅地に巨大金ぼたんみたいのがずららららっとあるやつも、最後の 皇帝御用達ゴージャス中華丼みたいな拵えもあんまり好きじゃなかったです。 と文句たれぶーになってしまいました。たぶん、初役ということもあり、役の性根をどのように 据えて和藤内になってればいいのかとまどわれていた。のでしょう。というか、そのように見えました。 そして、記憶もほぼ薄れまくっておりますが、好きな場面は序幕の、シギと蛤のところと 虎と遊んでるところと、母者人にたしなめられて、ほっぺったふくらませるところでした。 はい。
ガタイといい、隈ののり具合といい、荒事いいかなあと思うんだけど、どうも期待値ほど よくないのねぇ。複雑屈折が本領だからねぇ。 ま、そんなわけで、初役にして最後の役かもしれませんね。ま、荒事だったら怖いものみたさと 期待をこめて、暫の鎌倉権五郎さんや、賢いけれども朴念仁でも単純素直な鳴神くんとかの方を 観たいです。しかし、 理屈のないスーパーマンで「ぼんにくだせーてーてーしやーす」は、やっぱどうか? と、 女に初心な猪突猛進直線直角しか知りませんな鳴神くんは複雑屈折の吉さまにはどうか?など と想像しつつ、きらきらと汗のきらめく、紅隈ののったお顔を眺めるのはとっても好きな私です。 がっ、顔を眺めてるだけでは飽きてしまうのもまた真実。んもー、理屈も屈折もない、 ざ・荒事!は、 ニン的に無理かもしれませんねぇ。 ま、その分、複雑屈折苦悩悲嘆それでも初一念の役がすんばらしーのでいいんですけど。 そうねぇ、吉さまの役がらとしては、世話物よりはちょっとは好きかな。くらいのレベルです。 と、もひとつ懺悔が…二度目の観劇のとき、11時ちょんに歌舞伎座に到着できず、シギと蛤の 場面を見損なってしまいまひた。。。嗚呼…
2003年 5月18日と25日追記 夜 寝ても醒めても 表紙へ![]()