黄金と血の錦絵

 9月 2日 8日 11日 19日 22日 23日 25日 歌舞伎座 夜の部

 石川五右衛門=吉さま  此下藤吉久吉=富十郎丈
 錦絵なんて、イメージとして知ってるだけで、実物をじっくり見たことありません。 かろうじて池袋のデパート系美術館で、歌舞伎絵展を見たくらい。でも、絢爛豪華、豪 快、猥雑、エロティック、派手にみえて微妙な色あいの動く錦絵を観た!派手だけども 明るいだけではない、赤黒い血もほんのりどこかににじんでいるような、自分の血が沸 き立つような不可思議な感覚を味わったひとときでした。  吉さま、初宙乗りということで話題を集めている演目です。もちろん宙乗りも豪快豪 華にステキですが宙乗りが無くとも歌舞伎座からはみだすようなノリノリの吉さまを堪 能できることでしょう。
 大事に至ってはいないが(当然だが)ちょっとしたハプニングが連続してるらしい宙乗り。 (つづらが舞台の角に引っかかったり、つづら抜けの前につづらがグルグル回ってしまい、大 道具さんの「降ろせ!」の叫びに宙乗りなしで花道を引っ込んだり)私が観劇した時は何事も なかったのだがその場に居合わせなかっただけに、よけー心配。席について開幕前のワクワク と共に、ワイヤーを見上げてちょっと不安になる。  何事もなかったよう〜(くどいようだがそーでなくては困るのだ。)でも、そーいう不安な 目で観たせいなのか、それとも演出としてそーしてるのかちょっと細かくガクンガクンと飛ん でいるように見えた。スムーズに飛べてないのでは?もちろん「つづら背負ったがぁ〜おかし ぃかぁ〜!ぶぅわぁかぁめぇ〜!」もすっごくゾクゾク大音声で響いて、かっちょよかったが。 でも、宙乗りは心配の方が先にたってしまった。くれぐれもくれぐれも無事故息災安全祈願! な気持ちである。
 そして、山門はいいなぁ。 毎日あのお顔観ていたい(*^^*)いつまでも残暑と、芝居の熱気と拵えのためキラキラ光る汗の 美しい人間離れしたお顔であった。    ところで、吉さま舞台観劇中は他のことはあまり気にならない私だが、ねぇ、一階席で 「たっぷり!」「待ってました!」「大当たり!」「日本一!」「石川屋!」「大道具!」と 一連の歌舞伎関連の本に書いてあるような叫びをあげていたオヤジ!なんだかなぁ。。。 いや、大向こうの掛け声は好きよ、いいとこで「播磨屋っ!」ってかかると「ウンウン♪」っ て感じよ、んでも↑のオヤジはなぁ。。。本気で心の底から吉さまの芝居に惚れてかけた声と は感じられなかったなぁ。他の観客受け、もしくは「自分は通なんですよう」みたいななぁ。。 大体個人的な好みで、「たっぷり!」とかは好きじゃないなぁ。ま、まだゴエ吉さまみたいな らいいんだけど、ビデオで持ってる四段目の由良之助が、仇討ちの決意をして花道を引っ込む ようなところで「どうぞたっぷり!」とか掛けてる声がっ!(大爆発)  あ、話がそれちゃった。ゴエ吉さまにコーフン持続のためまだ「加賀鳶」の感想文が書けな い私なのでした。      (9月11日 夜)  
 衣冠束帯の黒の衣装の上手からの出、公家に化けた五右衛門が久吉とすれ違う。本物 の公家と思い、平伏する久吉一行の前を横切り花道から揚げ幕へ向かう。科白のない場 面。花道七三で不敵ににんまり、舞台の方に目をやり、すぐお公家の顔に戻って引っ込 んでいく。それだけの場面。これが、、、 立派でかっこよくて不敵で公家に化けていて品もあり大きい。 白塗りの顔に墨痕さえざえの眉、同じまろさまでも一條大蔵卿とは全然違う。顔の拵え も衣装の色柄も違うのだから当然といえば当然だけれども、出てきた瞬間からかっこい い。 もーちょっと説明ができないけど、なんてんでしょ、筋があってなきがごとし。百聞は 一見にしかず。だけれども、この演目ほどそれを痛感するこたぁありませんでした。はい。 だって、ほんとに極論しちゃえば、、、 かっこいい!だけなんだもん(褒め言葉)
偽勅使になって御殿の場。少年時代の竹馬の友、久吉とのやりとり。この場面でのお互 いの力を認めつつ、ライバル心もあり。友としての懐かしさもあり。悪ガキの頃を回想 させるようなやりとり。育ての親を人質にとられつづらに入れてそれを、こちらが出し た三千両で買いとれとの久吉との交渉。「子供の頃から他人の持ってるものを欲しがって」 と育ての父の言う五右衛門。「手下は巾着切りから五、六千・・」と言う台詞の大どかさ。 つづらを背負って、立ち回り。ここはちょっと大変そう。(^^;煙とともに襖の奥に消え ていく五右衛門。筋?イヤホンガイドいらんと思うぞ。アタシ的には。チラシの粗筋だけ で十分じゃないかな。そして舞台上をつづらがふわふわ飛んでいき、、、そして、、、初 の宙乗りに。うっふふ。。。かっこええ。。。欲を言えば、あの王子の鬘姿をもっと観た い。髪をさばく場面があるかと期待したら、つづら抜けたらすでにあのロンゲの私の大好 きな、でも、生で観るのは初めての王子の鬘で、飛んでいったあと、大詰めの山門の場で 新聞によると「百日鬘」松王丸の鬘がもっとでっかくなった感じのやつ。あれもいいんだ けどあの王子の鬘いいなぁ〜。ロンゲのゴエさま。飛んでるから間近で観られないのが、 ちっと悲しい。
 そして、もちろん宙乗りつづら抜けも「つづら背負ったがぁおかしぃかぁ〜!ぶぅわか ぁめー!」と不敵に言い放つ科白とともに、歌舞伎座までも背負った感じでかっこいいの だが、山門のゴエ吉さまは・・・ほんっと錦絵してますわ。前記の百日鬘で、ビロードの 布団着物(正式名称知らない。。)に黒に金銀の縫いの上掛け着物。裏地は紫。巨大な銀 煙管を持って咲き誇り、散る桜を眺めるその風情は、隈取りのような顔の拵えとあいまって 下手したら、滑稽でキワモノっぽくなるところを、日本人であるということなど、日頃意 識なぞしたことのない私が、DNAの底から血わフツフツわくように興奮しましたわ。 「絶景かな絶景かなぁ〜」それはまさにゴエ吉さまそのものなのでした。緊張に耐えられ ないからでなく、「なんかすごいもの魅せていただいてるぅ」との感覚で、つい口元がに まけてくるのを押さえきれないゴエ吉さまなのでした。ほんっと、人間離れしていながら 猥雑でエロティックで豪快で、私の貧弱な語彙では伝えられないような・・・ ものすさまじい、いいお顔でしたっ!!
 で、とってつけたようなコーフンだけの感想文一回め終了。まだ、書くよ。わし!(誰も止めへんて(^^;) あ、富十郎さんの久吉もよかったです。いや、視界にあんまり入れてないんですけど、こ れは私が吉さま舞台を拝見するときのポリシーのある癖だから。なんでそーなったか?って ことは次の機会に。いやほんま、良き競演者がいれば視界に入らなくても肌で感じる充実感 は全然違うと感じますです。                 (9月10日 夜)
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