ようやく籠釣瓶の感想終わりで〜す。
佐野に帰って、身代を整理している間の気持ち。どんなだったろうか?帰る道すがらには
もう抜け殻のようであったろう。激しい感情の嵐のあとの静かな空虚な心で、はたから見
ればそう落胆した風にも見えず、治六は安心したような不安なような気持ちであったろう。
帰ってからも見た目は前の旦那さまと変わらず穏やかに、冷静に身代を整理し、暇を出す
奉公人たちにも厚遇な扱いをしたであろう。一人きりになった部屋で見つめる刀、名刀村
正“籠釣瓶”虚ろに覚醒した眼差しで何度も刀を眺めては、そこに八ッ橋の顔を見たかも
しれない。刀を見つめながら微笑んだり落涙したりもしたであろう。砕け散った宝ものを
想って。
そして、また吉原へ。自分の中では大事件でも前と変わらぬ吉原の賑わい。前と変わらぬ
立花屋の見世、台詞の中で「あれから四ヶ月」というようなのがあったように記憶するの
だが、縁切りしたのは菊の頃(菊見がてらに廓の露…)それから四ヶ月というと、もう師
走?まぁ、寒い頃かな。消えてなくなってはいない生身の女としての八ッ橋。目の前に現
れた彼女を見て、じろざさんは不思議な気持ちだったかも。廓では刀は預けて登楼しなけ
ればならないので、普通の手荷物のようにこしらえて持ち込んだ籠釣瓶。
はっきりとした殺意がある。しかも四ヶ月の時間をかけて。罪は重い。周囲も八ッ橋自身
をも欺いての騙し打ち。それでもなおこのじろざさんが悪人とは思えない。彼には彼女を
消さなければならない理由があるから。そして八ッ橋も「許された」と騙されてはいるけ
れど、心の底でちゃんと「理由を知って」殺されていくから。(そうであって欲しい)
茶屋の衆を人払いしたあと、邪魔が入ってはならぬと階段梯子の様子を見てこさせるじ
ろざさん。床の間に置いた刀を確認し、畳を滑らないように足袋を脱ぐ。
「これからはまた初回となって、あすんでくださいよう。そのお祝いにわしの酌で、一口
飲んでくりゃれ・・」嬉しがって酌を受ける八ッ橋。許されたと思い込んでいる。
あれだけ私に惚れていたのなら、あなたが折れるのは当然ね。と、傲慢かましてるが、
(甘えといってもいい)女はそういうものだと思う。ましてや見得やあすびの社交場で売
り買いされる女。
それでもまだ、2人背中合わせに寄り添うと何ともいえない惑溺の表情になるじろざさん。。
はばかりでありんす。こんなに。。主が助けて(すけて)くんなますか。
大盃なれどわしが酌、飲んでくりゃれ。
それでもこんなにぃ。
あ、いや、、この世の別れだ…飲んでくりゃれ…(この声音のすさまじいこと)
えぇ!!
自分だけの花にしようとした矢先、よくも満座の中で恥をかかせたな。と恨みごとを言う
じろざえもん。男の人の恨み。たぎるようなその怨みに憑かれたような瞳。
愛想づかしされたときにそれほどのパワーがあったなら。。
目の前にいる八ッ橋は、四ヶ月前と同じ顔の八ッ橋。でも、じろざさんにとってけしても
う以前と同じではない。
ここで八ッ橋が言い訳したり、怖がったりしなければまた違う展開があったかもしれない。
惨めに生身の女のように命請いする八ッ橋でなければ。
一刀。
美しく崩折れて亡骸となる八ッ橋。
不思議なものを見るように見下ろし、一瞬愛しげな顔。すぐにそれが何だかわからないよ
うな顔になる。見つめる対象の亡骸になった女。安らかにも見える死に顔。紅っけの抜け
たあどけないような美しい顔。このときがひょっとしたら生身の八ッ橋を唯一愛した瞬間
だったかもしれない。
蝋燭の明かりを持ってきた仲居が、明かりを渡そうとして刀に気づく。悲鳴。
もう2人の世界を邪魔されたくないと思う。しーっ…一刀。
持ち重りのする刀。手から離れないような刀。
籠釣瓶は切れるなぁ…まばたきしない凝視、チャッチャッ。。。刀をかえして見つめる。
そのじろざさんの顔、その目。そして、こうなって始めて女が心底惚れるような男になっ
たじろざさんの顔であった。この後一体どーするのだろう?できれば、後追って死んで欲
しい“狂人”という名の穴に隠れることなく。
と、膨らみまくる記憶と、忘れ去られた記憶を糸に書いてきた籠釣瓶の感想文終わり。
で、殺し場で実は何が一番だったかというと…
一刀したときのはだけてつけね近くまで露出した左脚!!
塗っていないほんとの“ナマアシ”でべらぼーにセクシーでございました。
なんだか、一回しか観られないということもあり、ちょっと私の受け取り方が過剰だっ
たかもしれませんが、廓の色恋ざた。。などという下世話なものには見えず、敬虔な気
持ちにさせられた籠釣瓶。なんだか人間の原罪というような(なんのこっちゃ。。。)
ものまで感じさせられたお芝居でした。あと何回か観たかったです。9月歌舞伎座でも
上演してくれないかしらん。。
終わり。。。
2000年 6月 5日
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