絶望は深く果てしなく
歌舞伎座 9月 3日 昼の部
私的な禁を破って、初日観劇。クマちゃんからトラちゃんから山神くんまで見てきました。 やっぱりクマちゃん!これはぜひ陣屋まで続けて見たい。陣屋が悲劇の回想、記憶の哀しみとすれば、陣門・ 組打ちは悲劇の渦中。これは続けて見なくっちゃ。でも、すんごいくたびれそうだ。。 花道を鎧兜でやってきて、手傷を負った小次郎を小脇に引っ込む。黒馬に乗って、敦盛を追っての呼び止め。 おーい!おーい!おおおぉぉ〜〜〜いっ!でかい!おんま、大変そう。髪型がすごい。 オンマに乗るクマちゃん。馬に乗る熊。(言ってみたかっただけ) ど迫力な呼び止め。が、初日のまだあったまりきらない、よくいえば初々しい舞台面で、まだ、分厚い写真集 で渡辺保氏が書いているように「劇場をゆるがす勢い」まではいかない。しかし、人間離れした巨大さと意志 が声を迸らせているような馬上の騎士。ゾクゾクしちゃう。こうでなくちゃね。
そして、白馬の敦盛を追っていく。波間におんま。好き好き〜。遠見の子役に笑いがおきる。これはきっと 悲劇の緊張感の緩和でもあるのかと思う。ただ、遠近法を見せるためや、つなぎのためだけではないだろう。 昔も今もきっと驚きとともに子役が大人を演じる微笑ましさもきっと狙ったものだろうと。 でなきゃ、悲劇なのよっ!笑うなっ!ってことになっちゃうもんね。小さな子が白塗りすると羽二重餅のよ なつるつるぽちゃぽちゃほっぺでいぢらしい。あったりまえだけど肌のすべすべつるつるぷるるんに感激
追いつめた敦盛と2人きりの場面から、(セリから上がってくるのよん)あったまってくる舞台。心ならずも 殺さなければならない熊谷の逡巡や哀しみやらの葛藤。 絶望の深さの挙げ句の決意。一刀。首を手に(切り首でまた客席から笑いが。ここんとこは声を大にして言う 笑うな!) 「かぁぁちぃぃどぉぉきぃぃ・・・!」 ああ、ごめ、ごめ、すみ、すみ、すみ、ごめすみませんっ!許してください!堪忍してください! 心の中でひれ伏しちゃう熊谷の勝鬨の叫び。直後のその表情は・・・ 見てください。どんな言葉も虚しくなる表情です。私、ここでやられました。久々の歌舞伎座で、 初めて見る演目で、陣屋と違い転換があるし、舞台面が動くので追っかけていくので精一杯でした。その中で、 「初日だしなあ、プロンプ憑いてる人いるしなあ・・吉さまも歌舞伎久々だし、ま、こんな感じかな」 なんて、クールにかまえてましたのさ。んが、 あの顔見ちゃった日にゃあ、ああた・・・緊張の頂点で我が子の首をはねる。その首を手に(敵対してるけど) 味方の平山に対し、あげる勝鬨。その後の顔。 ここにくるまでは、小次郎ともはかった上で、身替わりとして死んでくれと含めたのだろうし、お互いが知っ ているのに、知った上で、敦盛になりすました小次郎に対しているのに、なぜ、逃げろと言うのか、同意の上 でもその場になれば、心もゆらぐ。ってのもわかるけど、そしたら、必死の想いで決意した敦盛を救うことも できなくなっちゃうじゃない?それとも、敦盛として、小次郎を逃がして、いづこなりと逃げて生き延びて欲 しかったのか?そして、自分は自害でもする気になったのか?でも、初陣で血気にはやった、そして、若さゆ えに純粋な小次郎が命だけを長らえたとして、それでよしなのか?とか色々考えてました。矛盾だろうと。 ここがあまりにも衝撃的だったので、名セリフの「いづれを見ても蕾の花・・」も呆けて夢うつつで聞いたの でした。
あんな顔をさせたくない。しかし、その衝撃から立ち直って黒馬に敦盛としての小次郎の鎧兜を背負わせ 最後の見得をする。 きんぐおぶ苦悩の座は誰にも渡しません。でも、苦悩がすさまじくて、もちっと何か方法はなかったの?と 体をゆすぶりたくなるよなクマちゃんでした。
とっても好きな歌舞伎のお馬さん、なぜか血が騒ぐ。熊谷の黒馬、敦盛の白馬。最後の場面のクマちゃんを お迎えにくる黒馬ちゃんが、けなげでかわいいのよね〜。と、平山ってやなやつねー。と、梅玉さんて、ある 意味化け物ね。(いい意味。)貴公子やらせたら日本一かも。これ、始まる前は、染五郎さんが一座してるな ら、染五郎さんだったらいいのに。とか思ってたんですよ。ま、ほとんど熊谷しか見ないけど。でもねー、 えもいわれずいいんだなあ。私の好みとしてはひょっとしたら、今の年齢の染五郎さんがやるよりもかえって ナマな若さのナマナマしさが無くてよかったかも。でも、見てみたかったけど。 梅玉さんの底力を再認識しました。と、松江さんもある意味化け物ねぇ。(いい意味)
だから、みんな早く除霊してねと願うのであった。(^^;雑感とりとめもなく。そして、首を手に勝鬨あげる クマちゃんは、舞台面のかなり際まできます。最前列で見ると衝撃度はものすごいです。とっても快感です。 身も心もぐったりですけど。体力蓄えて行きましょう。
9月 5日 夜
寝ても醒めても表紙へ