軽やかな陰惨 乾いた因果 そして雪の麻薬
2000年 2月 3日(い列35番)14日(い列17番)23日(い列21番)26日(い列10番) 歌舞伎座 昼の部
肌慣れた男との濡れごとの後のけだるさのような
寒夜の酒で火照った体を雪中に沈めた心地よさのような
肌さみしいときの妖しい空虚のような
さらさらさらさら降る雪の冷たさの素足に染みいる恋慕のような
覚醒しながら酩酊している剃刀のごとき心根のような
黒髪につく結晶の触れれば溶ける儚さのような
幸せな夢から醒めた頼りない柔らかな心のような
凍える指先に一瞬とどまったぬくもりのような
冷たい頬をかする刃の薄い鋭さのような
現世で見る輪郭のはっきりした幻の群のような
掌に受け止めてはこぼれてゆく若さの傲慢な刻のような
運命に操られてゆく愉しい諦念のような
所在ない子供の無邪気な残酷さのような
日常に潜む遊戯の曖昧さと現実の境目のような
血の盟約の義を求める幼心のような
浮世の闇に咲きこぼれて散る仇花のような
人の形をした魂の生活に存る肉欲のような
眠りこける無垢な悪の哀しみのような
肌を裂かれて晒される命の秘密を見るような
血潮の熱さにしおれる嫩のような
生きて彷徨う体をもてあつかいかねる純粋さのような
恋しい苛立ちに手に入れては壊す玩具のような
降りしきる雪に梅の香 堕ちゆく潔き花三輪
そう、初見のときに気になった吉さまの台詞も(初めて観る演目だけど、台詞がのろいように
感じた)馴染んで、大家の若さまのぐれた姿。。という、悪人でだけれどもお坊ちゃま育ちが
抜け切れてない温室のあたたかさの名残のようなものも感じられて、どうしてどうして私的には
立派にお坊に見えました。台詞の気持ちのよいことといったら、上等な飲み口のいい酒を機嫌の
いい時に飲んで、いい感じにふわふわしてる心地で、満足。「悪への招待状」を読んで想像では
因果の闇のどろどろ頽廃の話かととっても期待したましたが、その期待とは裏腹のさらさらした
味わい。お坊とお嬢の関係も同志愛と同性愛の混沌とした妖しいものには見えませんでした。だ
から、観る前の予想と期待は外れたのですが、がっかりしたかと言えばぜーんぜんそんなことあ
りません。本日(2月23日現在)三度目の観劇ですが、初回から私が感じたのは酩酊感です。
泥酔ではなく、それこそ「こころもちよく、うかうかと」って感じの。それはもう夜の部の熊谷
観てるときは全身に力が入り、引き込まれ観終えたあとに肩こり、頭痛のふらふら状態ですが、
三人吉三はいい心持ちで心身ともに絶好調のときにいい酒を飲んだときのような感覚。肩から力
は抜けて、手も緊張で冷えて汗ばんだりせず、血の流れがさらさらしてるみたいに。
吉さまは、お坊の柄ではない。。かなぁ。とも思いましたが、いやいやどうして若い、放蕩グ
レの投げ遣りな鋭さといいますか、一応庚申丸を取り返してお家再興を望んでいる。。との大儀
名分はあるものの、「どうでもいいや〜」的な虚無感はちと弱いですが、何をなさっても思慮深
く見えがちな吉さまにしては、かなりお坊になっているなぁ。と本日感じましたです。
團十郎丈のがニンではないか?とのお坊ですが、(吉さまは和尚の方が。。の声も。)またこ
れが、和尚が合う。あのひとつべっついとやらいう中途半端坊主ハゲ(?)の鬘があんなに似合っ
て、というか、あれをかぶってあんなに美しいとは!写真でしか見たことなかったですけど。し
かも迫力も貫禄もあって、きっちりお坊とお嬢の兄貴分に見える。肌艶から目の光から、3人並
ぶと一番若い(実年齢も3人の中で一番下。でも同世代)のですが、綺麗だけれどもちと、マダ
ムっつーか姐御に見えるお嬢にも、ガタイから、顎の線から見た目だけでは貫禄十分のお坊にも
負けてない。兄貴分の頼もしさあり。吉さまと一座なさらない限り、あまり観る機会のない團十
郎丈ですが、正直見直しました。あまり台詞が・・・の印象が強かったので、ビジュアルはとも
かくちと苦手でしたが、まるっきり気になりませんでした。しかし、なじぇ、あんなに瞳がキラ
ッキラなの?
そして、お嬢の菊五郎丈は、やっぱりどー芝居の魔法の目で見ても「17〜8の娘」には私に
は見えなかった。。(実年齢が云々ではなく。)丈の持つ雰囲気がもう「娘」ではないんですね。
たぶん。しかし、吉さまお坊に、團十郎丈和尚とバランスの合うお嬢役といえば菊五郎丈の他に
私には思い浮かばず、娘には見えにくいが、綺麗なことに変わりはなし。台詞もよし。ただ、私
の好みのみを言いますとも少し頽廃美というかどろどろさというか、すこうししつこい所が欲し
い気が・・・お坊と2人きりの場面でもちょっと妖しさは無かったなぁ。寄り添って「アァ、懐
かしかったなぁ」のとこで笑いが起きちゃうんで。。笑うとこちゃうやろ。もちろん吉さまお坊
にもそういう点での妖しさは稀薄ですけれど。女装の盗賊なので、“女”になる必要はないので
しょうが、もうちっと性別を超越しちゃった妖しさっつーかそんなものが欲しかったです。
で、場ごとの感想を書こうとも思うんですが、ひとまず。アタシの一番好きなのは、、、火の
見櫓の場ですねぇ。舞台に降る雪。好きなんです。もー理屈抜きで血が騒ぐ。その雪のなか素足
で立ち廻りですもんねぇ。嘘の雪とは言っても。履き物はかずに。端折った白塗りナマアシに釘
付け。とんぼをかえらせようが、真正面にお嬢がこようが、お坊しか見えない。。動きのタイミ
ングで脚のつけねギリギリまでのぞく。。嗚呼、セクシー。生身の男の脚がこんなにセクシーに
見えようとは。しかもそれは全然嫌らしかったり生ぐさかったりはしないんだなぁ。熊谷にはち
ょー感動しつつも、惚れて色事してみたいのはお坊なんだなぁ。。。(なんのこっちゃ)そーい
うわけで、大人の三人吉三、素晴らしかったです。はい。今脂ノリノリの3人の歌舞伎役者が並
ぶところはほんにゴージャス。これぞ競演。
幕切れの3人のスリーショットも欲しかった。スリーショットは大川端の場面のしかないんだも
ん。舞台写真。ちと不服。
いやぁ、面白かった。堪能しました。(3月は蟄居なんで、場ごとに感想書いて反芻しよっと♪)
2月23日 夕刻(はずかし〜。酩酊してます。飲んでるわけぢゃないけど(*^^*))
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