その小さないとけない手:盛綱陣屋

 2月 6日 歌舞伎座(13日、24日も観劇)

 「もののふ」の吉さまが好き。着流しも良いが、裃袴の正装や、鎧甲冑姿なおなお良し。
背負ってるものが大きくて大変でそれでも信念と覚悟のあるもののふ。筋を通しながら、人
間くささや情味を持っている男。こんなにも裃や鎧甲冑の似合う男はそうはいまい。刀、懐
紙の扱いも美しい・・・(*^^*)

 非情残酷なお話である。敵味方に別れている兄盛綱と弟高綱。それぞれの息子である初 陣の小三郎と小四郎。初陣の手柄に小四郎を捕らえたのが小三郎。甥である小四郎を弟で ある高綱が子ゆえの闇に迷わぬように殺そうとする盛綱。しかもそれを母微妙(小四郎に とっては祖母)に促すように頼む。理不尽だー!残酷だー!・・でもそれをいっちゃー始 まらないのねん。。しかし、初めて観た日は胸がつまってちょっと芝居として感動するに してもやりきれない想いがしました。    吉さまの盛綱は素晴らしい!常々感じていることだが出の瞬間に鮮やかに匂うような華 がある。襖が開いて、黄金の(金茶というのかな?)裃袴で姿を現した刹那に大樹に咲く 凛として香気高い白い花のような姿。そして科白が素晴らしい・・・技術的なことはもち ろんだろうが良く通り、言葉がくっきり聴こえて、そして心の伝わる科白。上手く言えな いが私は吉さまの、特に科白には絶対の確信ある信頼を持っていて、ちょっと苦手なお役 でも観ているうちはけしてこちらの気持ちを放さない科白である。と思う。なに?愛ゆえ? いんにゃ観客というのも残酷だから、吉さま命!の私でも万が一にでも「?」と感じるよ うなことがあれば逆に愛が大きいからこそ、ものすごく醒めてしまう気がするのだ。立派 で凛々しく、智にたけていながらも胸を切なくさせるお役であった。  信念と覚悟を持つ人間、そして心に苦悩を抱く人間が吉さまにはよーく似合うと私は思っ ていて、そのストイックさが一番出るのが「もののふ」だなぁと惚れ惚れしてしまいます。 無論、形、立ち居振る舞いも美しくて、懐紙を扱う仕草が私は大好き♪懐から取り出したり、 使い終わって丸めて袂に入れたり、少し懐からはみ出してきたときにスッと押し込んだりす る手の表情がとてもとても美しい。先月の梶原さんの懐紙も欲しかったー。盛綱さまの懐紙 も欲しいー♪長袴のさばきも美しい♪  で、相変わらず吉さまと一緒に演技しているときの他の役者さんには目がいかなくて(^^; 富十郎さん、芝翫さんもほとんど目に入っていないという不届き者である。(全然ではない の。許して〜)嗚呼、国宝コンビ。特に富十郎さんは少ししか出番がなく、吉さまと一緒の 場面にしか出ていらっしゃらないので(あ゛花道から舞台へ来るときは一人。でも舞台の吉 さましか観てない(^^;)赤橙っぽい全体に派手な色味だけが網膜の隅っこに残ってるだけ・・ でもでも、シャキシャキと口跡がよいので耳でお声は聞いてました。  芝翫さんの微妙は・・・良かった。ちょっと個性が強い感じがするのでちょっと得意では ないのだが白髪の佐々木の後室の雰囲気がありました。それでいて孫に対する憐憫がよく出 ていたと思います。  宗十郎さんの演ずる篝火って、歌舞伎ではかなり特異な女性ですねぇ。実際のことは知り ませんが武士の奥方って大義名分、忠義、貞節の塊みたいで「戦で死ぬならあっぱれ」みた いのが多いじゃないですか?心の内はどうあれ。けど、篝火は夫高綱に背いて(それとも内 緒で?)我が子可愛さに救うために盛綱の陣屋にやってくる。夫に逆らう=主君にも逆らう ですもんね?良い悪いじゃなく、ごく単純に不思議でした。  そして、吉さまに釘付けの私の視線を否応なく向けさせたのが、種太郎くんの小四郎。い とけない。いじらしい。誇り高い。ばばさまの帯元あたりに手をついて(死ぬのは嫌)かぶ りを振るとこ、3回ともウルルときちゃいました。あと、最期の「ばばさま〜縄目にかかっ ても〜わしゃ卑怯ではござりませぬ〜」・・・ウルル。  これが初舞台の、役者名がついた初めての舞台ということですよね?種之助ちゃんの小三 郎。こりゃまた鎧甲冑に覆われちゃって、ちいちゃくて可愛くて。出番も科白も少ないけど 登場するたびにその場をさらってましたね。(^-^)盛綱に「小三郎いずれにあーる?」って呼 ばれて「はぁーただいまご加勢つかまつりましゅー」んもー拍手♪首実験になって屋台(?) の上で大人の武士たちに囲まれて座ってるだけのときも私が観た3回とも目を開けていたし。 嗚呼、こうやってまた歌舞伎役者が育っていくのねん。と感無量でしたわ。種太郎くんも種之 助くんも・・・なんせ義民伝にもこの兄弟出てましたしねー。
(吉さまに男子がいらっしゃらないのはしょーがないことだけどファンとしてはやっぱり残念だな。。。)  吉さまの科白では「母人そこにおわするかー」と「犬死にはさせりゃりょかー」の前後。 空で覚えていられないのが口惜しいー!「なぜ誉めておやりにならぬ?誉めておやりなされ 誉めて」あと、科白ではないんだけど瀕死の小四郎に「叔父上〜」と呼びかけられて「うー ん?」(活字では表せないあの声音!)のとこです。  また観たい。いろんな小四郎、小三郎で。 あ、忘れるとこだった。盛綱が小四郎の顎をすっとすくって自分の方を向かせるとこ! だいっすっき(大好き)♪  ちょっと2月はお風邪を召されていたようですが13日に観たときが(初見のせいもある かも)一番良かった気がします(おこがましい〜。私ってば)
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